サウナで『ととのう』とは?心身に与える影響を徹底解説

近年、日本各地で空前の“サウナブーム”が巻き起こっています。
サウナがもたらす美容・健康効果が広く知られるようになったことで、その人気は年々高まるばかりです。
この記事では、そんな現代サウナの魅力とブームの背景、さらには心身への具体的な効果について詳しく解説していきます。
是非最後までご覧ください。

近年のサウナブームの理由
かつて「サウナ」と聞くと、多くの人が中高年の男性たちが集う場所というイメージを持っていたのではないでしょうか。彼らにとってサウナは、日々の仕事の疲れを癒す場であり、友人や同僚との交流の場であり、ときには自分を追い込むような“修行”的な意味合いも含まれていたように思います。また、前夜に飲みすぎてしまった際には、アルコールを体外に排出するための“デトックス”的な利用法としても活用されていたことがあります。さらには、サウナの後に飲む冷えたビールが格別に美味しく感じられるという「ご褒美」を求めて通う人も少なくありませんでした。
また、スポーツ選手や減量を目指す人の中には、サウナによって一時的に身体から水分を抜くことで体重を減らすという目的で利用していたケースもありました。しかし、これは一見すると成果が得られているように思えても、実際には身体に大きな負担をかける危険な方法であり、気持ちよさやリラックスとはかけ離れた利用法だったと言えるでしょう。
ところが近年、こうした従来のイメージとは異なり、サウナは老若男女を問わず、幅広い層から支持を集める存在へと変化してきました。若い世代の間でも「ととのう」という感覚が共通言語となり、SNSを通じてその体験がシェアされることで、一気にサウナの人気が広がりました。
その背景には、サウナをより身近に、気軽に楽しめる環境が整ってきたということが大きく関係しています。たとえば、かつては健康ランドやカプセルホテルの一角にあるものという印象が強かったサウナも、今ではスーパー銭湯、フィットネスクラブ、スポーツジムなど、年齢や性別を問わず入りやすい施設にも広く設置されるようになりました。ファミリー層やカップルでも気兼ねなく利用できるような、明るく清潔感のある施設が増えていることも、人気の理由の一つと言えるでしょう。
さらに、サウナを主役とした専門スパ施設の登場も、このブームを後押ししています。従来の「おまけ」としてのサウナではなく、内装、温度管理、水風呂の質、外気浴スペースの整備などにこだわり抜いた“サウナが目的の施設”が次々と誕生しています。利用者は単なる入浴や汗をかく体験にとどまらず、五感を使って深いリラクゼーションを味わうことができるため、これまでサウナに馴染みのなかった層にもその魅力が届くようになってきました。
加えて、自然の中で楽しめる「テントサウナ」や「モバイルサウナ」といった新しい形態も登場し、アウトドアとサウナの融合による非日常的な体験が人気を集めています。川辺や湖畔、山の中など、自然の風景の中で身体を温め、そして冷水浴を楽しむという行為は、都会の喧騒から離れ、心身ともにリセットできる極上の時間として支持されているのです。
このように、現代におけるサウナは、単なる発汗の場や疲労回復の場ではなく、「心身を整える総合的なウェルネス空間」として、多くの人にとって必要不可欠なライフスタイルの一部となりつつあります。
サウナの基本は温熱効果と温冷交代浴
サウナが心身に与える影響の根幹にあるのは、「温熱効果」と「温冷交代浴」という二つの原理です。これらはどちらも身体の血流循環、自律神経系、そして代謝機能に働きかけることで、健康や美容、そしてメンタルの安定にもつながる重要な要素といえます。
まず、「温熱効果」について解説します。これは、文字通り“身体を熱で温めること”によって得られる生理的な反応のことを指します。人間の身体は高温の環境に入ると、自律神経の一つである交感神経が優位になり、体温を調整しようと働き始めます。その一環として、皮膚表面の血管が拡張し、全身の血流量が増加します。この血流の活性化によって、酸素や栄養素がより効率的に細胞へと運ばれ、新陳代謝が促進されます。同時に、疲労やストレスによって体内に蓄積された老廃物や疲労物質(乳酸やアンモニアなど)も、血流に乗って排出されやすくなるため、結果的に疲労の回復や体調のリセットにつながるのです。
また、温熱による発汗作用も重要なポイントです。サウナの高温環境下にいると、身体は体温上昇を防ぐために汗をかき始めます。この汗をかくことで、毛穴が開き、皮膚表面に溜まった汚れや皮脂が自然に排出され、美肌効果も期待できます。普段あまり汗をかかない、いわゆる“汗腺が働きにくい”体質の人にとっては、サウナに入ることで汗腺の活動が促され、体温調整能力が改善される可能性もあります。
さらに、身体が温まることで筋肉の緊張が和らぎやすくなります。現代人に多い肩こりや腰痛といった不調は、血行不良や筋肉のこわばりが原因であることが多く、温熱によって筋肉がほぐれることで、これらの症状の軽減や緩和が期待できます。加えて、副交感神経が徐々に優位になることで心身がリラックスし、精神的な緊張からも解放されるため、不安やストレスの緩和にも効果的と言われています。
次に、「温冷交代浴」についてです。これは、サウナによってしっかりと身体を温めたあとに、水風呂で一気に身体を冷やすという方法で、血管の拡張と収縮を意図的に繰り返すことで、血流のポンプ作用を強めることを目的としています。温まった身体が急激に冷えることで、血管が収縮し、その後また常温に戻る過程で再び拡張する。このサイクルを通じて、より効率的に血流が促進され、老廃物の排出や新陳代謝の活性化がさらに進むとされます。
また、温冷交代浴は、自律神経を鍛える効果もあります。交感神経と副交感神経という二つの自律神経のバランスが良くなることで、睡眠の質の向上やストレス耐性の強化、集中力アップなど、日常生活における様々なメリットが報告されています。「ととのう」といわれる独特の爽快感やリラックス感も、こうした自律神経の切り替えによる作用の一つと考えられています。
ただし、温冷交代浴には注意点もあります。たとえば、サウナで温まりすぎた状態で急に水風呂に入ると、血圧や心拍数が急激に変動し、「ヒートショック」と呼ばれるショック症状を引き起こす可能性があります。これを防ぐためにも、サウナから水風呂に入る前には、必ずかけ湯やシャワーで汗を流し、段階的に温度差に身体を慣らす必要があります。これは衛生面でのマナーとしても大切ですが、身体への安全配慮という意味でも極めて重要なステップです。
また、温冷交代浴は非常に強い刺激を身体に与える行為でもあるため、心臓や血圧に不安がある人、体調が万全でないときには控えることが望ましいです。
サウナといえば「ととのう」その魅力とメカニズム
近年のサウナブームを語るうえで、最も象徴的なキーワードとなっているのが「ととのう」という言葉です。サウナ愛好家たちの間で共通の体験として語られるこの「ととのう」という現象は、単に汗をかいてスッキリするというものではなく、心身の状態が絶妙なバランスで調和した、一種の“快感”や“覚醒”をともなう状態であるとされています。
具体的に「ととのう」とはどういった状態を指すのでしょうか。それは、サウナ室で身体をしっかり温めた後、水風呂で一気に身体を冷却し、そのあとに外気浴や休憩を挟む。この一連のプロセスを数回繰り返すことによって訪れる、特有の感覚的体験のことです。このとき身体は深いリラックス状態にあるにもかかわらず、頭の中はむしろ冴えわたり、五感が研ぎ澄まされたような感覚になります。例えるなら、心は静かに落ち着いているのに、思考はクリアで、集中力が増したような状態。まさに身体と精神が“整った”状態であることから、日本では「ととのう」と呼ばれるようになりました。
この「ととのう」感覚が得られることに魅了され、週に数回サウナに通う人や、全国の名サウナを巡る“サウナ活動(サ活)”を楽しむ人も少なくありません。SNSでは「#ととのった」という投稿が多く見られ、その多くが「最高だった」「生き返った」といった強いポジティブな感情とともに記録されています。
しかしながら、「ととのう」という体験の本質、つまりそのとき人体の内部で何が起こっているのかについては、現在のところ医学的・生理学的にまだ完全には解明されていません。一部の専門家の間では、この状態を「身体が一時的な危機的状況に置かれたあとの生理的な反動」であるという見方もあります。つまり、急激な温冷刺激を与えることで一種のストレス状態に陥った身体が、その回復過程において快感や安心感を得るという仮説です。
さらに興味深いのは、「ととのう」という概念がサウナの本場・フィンランドには存在しないという点です。フィンランドにおけるサウナ文化は、あくまでも生活の一部、家族との交流や日々の疲れを癒す習慣の一環として自然に根づいており、「ととのう」のように強烈な感覚を追い求める文化とは少し異なっています。これは、日本独自の感受性やストレス社会との関係性の中で育まれてきた文化的な要素とも言えるかもしれません。
「ととのう」状態を引き起こす要因の一つとして注目されているのが、脳内ホルモンのひとつである「β-エンドルフィン」の分泌です。β-エンドルフィンは“快楽ホルモン”とも呼ばれ、強いストレスや運動のあとに分泌されることで知られています。たとえば、長距離ランナーがゴール後に味わう高揚感、いわゆる「ランナーズハイ」と同じような原理で、身体的な限界に近い状態のあとに脳が幸福感をもたらすためにこのホルモンを分泌していると考えられています。サウナ→水風呂→休憩という過程で、強い刺激とその後の安らぎを得ることで、このホルモンが放出され、「ととのった」という至福の感覚につながる可能性があります。
また、別の説では、自律神経の働きが「ととのう」感覚に関係しているとする見解もあります。人間の自律神経は、活動時に優位になる「交感神経」と、休息時に優位になる「副交感神経」の2つから成り立っており、通常はこれらがバランスを保ちながら切り替わることで体調が整えられています。サウナ室では高温刺激により交感神経が活発になり、身体が“戦闘モード”ともいえる覚醒状態になりますが、その後に水風呂で一気に冷やすことで交感神経はさらに刺激され、緊張状態が強まります。そして最後に外気浴や休憩でゆったりと身体を休めることで、副交感神経が優位になります。この一連のスイッチングの過程において、身体はリラックス状態に入りながらも、脳はすぐにはその切り替えに追いつかず、覚醒状態がしばらく続くため、結果的に“身体は脱力しているのに、頭はクリア”という不思議な状態が生まれるのです。これが「ととのう」感覚の正体ではないかとも言われています。
いずれにしても、この「ととのう」という体験が、日々のストレスや疲労に悩まされる現代人にとって、心身をリフレッシュする極上の瞬間であることに変わりはありません。ただし、その快感を追い求めすぎるがあまり、過剰なサウナ利用に走ってしまうと、逆に身体に負担をかける危険性もあります。とくに水分不足のままの利用や、極端な温度差の繰り返しは心臓や血圧に大きな影響を与えることもあるため、健康状態と相談しながら無理のない範囲で楽しむことが大切です。
サウナがもたらす「腸の活性化」
腸は「第二の脳」とも称されるほど、私たちの健康や感情に大きな影響を与える重要な器官です。腸内環境が整うことで免疫力が高まり、消化・吸収がスムーズになるだけでなく、脳との深い関係によって気分や感情のコントロールにも関与すると言われています。サウナで身体の中心からじんわりと温まることにより、腸の動き(蠕動運動)が促され、腸内の血流が良くなることで、腸の機能そのものが活性化されるのです。その結果、便秘の改善や腹部の膨満感の解消、消化吸収能力の向上などが期待でき、まさに内側からの健康サポートにつながります。
さらに、サウナに入っているときに感じる“気持ち良さ”や“安心感”には、脳内ホルモンの一つである「オキシトシン」が関係しているのではないかという考え方もあります。オキシトシンは「愛情ホルモン」「癒しホルモン」などと呼ばれることもある脳内物質で、人との触れ合いや安心感を得られる場面で多く分泌されることが知られています。オキシトシンは脳の視床下部から分泌されるホルモンであり、これが分泌されることで私たちは心が穏やかになり、不安や緊張、ストレスが軽減されるとされています。
そして実は、そのオキシトシンの分泌に深く関わっているのが「腸」なのです。腸は、単なる消化器官ではなく、脳と神経ネットワークを介して情報をやりとりする「腸脳相関」という概念のもと、私たちの感情や行動に間接的に影響を与えていると考えられています。腸内環境が良い状態で保たれていると、脳へのポジティブな信号が伝わりやすくなり、その結果、幸福感をもたらすホルモンの分泌が促されるという仕組みです。
そのため、サウナに入って腸が温まり、腸の動きが良くなり、血流が促進されることは、結果的に脳に「今は安心してもいい」というサインを届ける役割を果たし、オキシトシンの分泌を促すのではないかと考えられているのです。実際に、サウナに入ると「イライラが消えた」「気分が落ち着いた」「考えがクリアになった」という体験を語る人が多くいますが、これも腸と脳が連携して働いた結果かもしれません。
このような作用は、日々多忙でストレスフルな環境に身を置くビジネスパーソンにとって非常に大きな恩恵となり得ます。実際、近年では「サウナ好きの経営者」が注目されており、多忙な日々の中でもサウナをルーティーンに取り入れていることで、心身のバランスを保っているという例も数多く報告されています。仕事の合間や終業後にサウナに入ることで、脳を休ませ、感情を整え、思考をリフレッシュさせる。このプロセスは、ストレスの多い現代社会において非常に有効なセルフケアの手段と言えるでしょう。
親子でのサウナ利用は注意が必要
サウナ人気の広がりに伴い、最近では親子でサウナを利用するケースも増えてきました。家族でリラックスできる時間を共有できることは魅力的ですが、小さな子どもがサウナに入る際には、大人と同じように考えてはいけない点がいくつもあります。
まず、小さな子どもは大人と比べて身体の表面積が小さく、体温が急激に上がりやすい特徴があります。そのため、短時間でもサウナの熱による影響を強く受けてしまうことがあります。また、熱さに対する感覚が敏感なため、大人が「ちょうど良い」と感じる温度でも、子どもにとっては「不快」だったり、「苦痛」に感じてしまうこともあります。
加えて、子どもはまだ自律神経や体温調節の機能が発達途中にあるため、大人のように汗をかいて体温を調整する力が十分ではありません。その結果、サウナ内での体温上昇をうまくコントロールできず、脱水や熱中症、さらには熱性けいれんなどのリスクもあります。
こうした理由から、医師の見解や一部のサウナ施設では以下のような年齢制限を設けています。
- 5歳以下の子どものサウナ利用は原則禁止
- 6歳から10歳までは、保護者が必ず同伴し、体調を観察しながら短時間・低温で利用すること
また、子どもの様子をよく見て、少しでもぐったりしていたり、熱がりすぎている様子があればすぐに休ませましょう。水分補給も忘れずに。
親子でサウナを楽しむには、「子どもが楽しめているかどうか」を最優先にし、無理をさせないことが基本です。利用するサウナ施設の温度や環境にも配慮し、ミストサウナや低温サウナなど、刺激の少ないタイプのサウナを選ぶことがおすすめです。

まとめ
「ととのう」という感覚に代表されるように、サウナは肉体的なリフレッシュに加え、メンタルケアや腸内環境の改善、さらには思考や集中力のリセットにも貢献する、現代人にとっての“オアシス”と言えるでしょう。
ただし、その効果を安全に最大限に活かすためには、体調や年齢に応じた適切な利用が欠かせません。
正しい知識と無理のないスタイルで、自分にとって最適なサウナの楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか。
TRANSCENDでは、一人ひとりの状況に合わせて適したメニューを組んでいます。
通う頻度についても月2回、月4回、月8回の3つのプランから選択できるので、お気軽にご相談ください。