メタボ・ロコモ・サルコペニアを徹底解説!中高年が知っておくべき健康管理完全ガイド

現代人の健康を脅かす要因として注目されているのが、「メタボリックシンドローム」や「ロコモティブシンドローム」、そして「サルコペニア」といった加齢や生活習慣に起因する身体の変化です。
これらは互いに密接に関係し合いながら、気づかぬうちに私たちの生活の質や健康寿命を大きく損なう可能性を秘めています。
特に内臓脂肪の増加や筋肉量の低下は、動脈硬化、心疾患、糖尿病などのリスクを高める重大な要因となります。
この記事では、それぞれの概念を詳しく解説するとともに、効果的な予防・改善策についても具体的にご紹介していきます。
是非最後までご覧ください。

メタボリックシンドロームとはなに?
メタボリックシンドロームとは、特定の疾患名を指しているのではなく、複数の病態や生活習慣病が重なり合い、健康に対して重大な影響を及ぼす状態を総称した言葉です。具体的には、肥満症、高血糖、高血圧、高脂血症(脂質異常症)といった複数の疾患が同時に、あるいは連鎖的に存在し、それらが相互に関連して悪影響を与えることで、より深刻な病態を引き起こすリスクが高まることを示しています。
近年の医学的研究から、こうした複数の生活習慣病が重なり合うことにより、動脈硬化を促進し、脳卒中や虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)といった生命に関わる重大な疾患や合併症の発症リスクが格段に上昇することが明らかになっています。そのため、メタボリックシンドロームは単なる個々の病気の合併ではなく、これらの疾患間の相互作用を考慮した上で、包括的かつ総合的に予防や治療の対策を立てることが非常に重要とされています。
このメタボリックシンドロームの主な要因として、特に注目されているのが内臓脂肪の過剰な蓄積です。内臓脂肪は腹部内の臓器の周囲に付着し、過剰に蓄積すると、脂肪細胞から健康に悪影響を及ぼすさまざまな物質が分泌されることが分かっています。これらの物質がインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病のリスクを高めたり、血圧の上昇やコレステロール値の異常を促進したりします。さらに、慢性的な炎症状態を引き起こし、血管壁の損傷や動脈硬化の進行を加速させる要因にもなっています。
したがって、メタボリックシンドロームの予防や改善には、まず内臓脂肪量を減少させることが最も効果的な手段とされています。具体的には、適切な食事管理や適度な運動習慣を生活の中に取り入れることで、内臓脂肪を効果的に減少させ、これに伴う各種の生活習慣病のリスクを低下させることが可能となります。また、定期的な健康診断や早期からの生活習慣改善が、重大な疾患の予防に非常に有効であることも強調されています。
健康的な減量には運動と食事管理が必須
身体に無理な負担をかけずに体重を健康的に落としていくためには、運動と食事管理を組み合わせることが非常に重要です。特に、無理な食事制限による単純なカロリーの抑制だけでは、理想的な体重減少や健康維持は難しいことが多くの研究で明らかになっています。
極端な食事制限を行うと、身体は飢餓状態に近い状況に陥り、生命維持のためにエネルギー源として筋肉中のタンパク質(筋タンパク)を優先的に分解し始めるからです。その結果、一見すると体重は減少しますが、実際には筋肉量が大幅に減り、体脂肪量(特に内臓脂肪)の減少にはあまり効果的ではありません。
筋タンパク質が失われることで筋肉量が減少すると、身体の基礎代謝が低下します。基礎代謝とは、何も活動していない安静時にも生命活動を維持するために消費されるエネルギー量のことです。この基礎代謝が下がると、日常的な活動や運動で消費されるエネルギーの量も減少するため、結果として体脂肪を燃焼させる能力が弱まってしまいます。
初めのうちは体重計の数値が低下することで、減量が成功しているように感じるかもしれませんが、実際にはこの状態はメタボリックシンドローム予防の観点からは逆効果と言えます。基礎代謝の低下によって体脂肪が燃えにくい体質になると、その後通常の食事に戻した際に、体重が急速に増加しやすくなります。これがいわゆるリバウンド現象であり、繰り返すほどさらに脂肪を蓄積しやすく、太りやすい体質になってしまうのです。
したがって、メタボリックシンドロームを予防し健康的な減量を進めていくためには、適切なカロリー制限に加えて、タンパク質の摂取量を意識的に増やし、筋肉量を維持・増強しながら運動を併せて行うことが推奨されます。運動によって筋肉量を維持しつつ、体脂肪を効果的に燃焼させることで、基礎代謝を高く保ちながら内臓脂肪を減少させることが可能となります。
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて効率良く脂肪燃焼
蓄積された内臓脂肪を効果的に減少させるためには、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳といった有酸素運動が有効であると考えられています。有酸素運動とは、酸素を利用しながら長時間持続的に行える運動であり、体脂肪をエネルギー源として優先的に消費する回路を活性化するという特徴があります。こうした運動を定期的かつ継続的に日常生活に取り入れ、日常の身体活動量を増やすことは、内臓脂肪を含む体脂肪の減少にとって極めて重要な要素です。
しかしながら、有酸素運動を行いながら同時に厳しい食事制限を行うと、身体はエネルギー不足の状態となり、筋タンパク質の分解が促進されるリスクが高まることが専門的な研究により指摘されています。具体的には、有酸素運動自体には脂肪燃焼効果があり、全体的な体重減少をもたらす一方で、食事制限によって引き起こされる筋肉量の減少を防ぐ作用は限定的であることが明らかになっています。
そこで重要となるのが筋力トレーニングです。筋力トレーニングは、筋肉量や筋力を維持あるいは増強させることが可能な運動形態であり、特に加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)を防ぐ上で極めて効果的です。実際に40代以降の成人は、特に下肢の筋肉量が毎年およそ1%ずつ減少するという研究結果があります。この筋肉量の減少は加齢に伴う基礎代謝の低下と密接に関連しており、筋肉量が低下すれば基礎代謝が減少し、結果として脂肪が燃焼しにくい身体へと変化してしまうのです。
メタボリックシンドローム予防を目的とした中年世代においては、単に体重を減少させることだけではなく、加齢によって自然に進行する筋肉量低下を防ぐことも併せて考慮する必要があります。そのため、有酸素運動と並行して筋力トレーニングを定期的に取り入れ、筋肉量や筋力の維持および増強を図ることが非常に重要です。特に、スクワット、デッドリフト、レッグプレスなど、下肢の筋肉を中心に鍛える種目を実施することが推奨されます。
一方、筋力トレーニング自体が内臓脂肪を直接的かつ即効的に減少させる効果は比較的低いとされています。しかし、筋肉量を増加させることで基礎代謝が向上し、長期的に見れば脂肪が燃焼しやすい体質に改善されることが期待できます。つまり、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることによって、内臓脂肪の減少および健康的な体重維持を実現することが可能となるのです。
メタボリックシンドロームが問題視される理由
前述したように、メタボリックシンドロームとは、肥満症、高血糖、高血圧、高脂血症(脂質異常症)といった動脈硬化を引き起こす危険因子を複数同時に持つ状態のことを指します。これらの危険因子は単独であれば比較的軽度であっても、いくつかが重なり合うことで動脈硬化の進行が著しく促進され、その結果として心筋梗塞や狭心症などの心疾患、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患が引き起こされる可能性が高まります。
メタボリックシンドロームが問題視される理由の一つは、これらの危険因子がそれぞれ単独では大きな問題として認識されにくい軽度なものでも、複数重なり合うことで相乗効果的に疾患リスクが高まってしまうという点です。また、糖尿病、高血圧、高脂血症といった代謝異常の初期段階では特別な自覚症状がなく、自分自身が気づかないうちに病態が進行してしまうことが多いため、早期発見や予防の難しさが指摘されています。
さらに、外見的に明らかな肥満ではなくても、内臓脂肪の蓄積が多い場合があります。このような内臓脂肪型肥満は、見た目ではわかりにくいため、自覚する機会が少なく、健康診断などで偶然発見されるケースが多いと言われています。そのため、気づいた頃にはすでに動脈硬化が進行し、深刻な状態になっていることもしばしばあります。これらの疾患や症状は切り傷や打撲のように痛みを感じないことが多いため、自覚症状のないまま病気が進行してしまうことが特に問題となっているのです。
日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準としては、まず内臓脂肪の蓄積を判断するためのウエスト周囲を測定し、男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合を対象とします。さらに、高血糖、高血圧、高脂血症という3つの因子のうち、2つ以上を併せ持っているとメタボリックシンドロームと診断されます。
2006年に行われた国民健康・栄養調査では、40歳から74歳の成人男性のうち約2人に1人、成人女性では約5人に1人がメタボリックシンドロームまたはその予備軍に該当すると報告されています。当時40歳だった方も、現在では17年という歳月が経過し、かつては該当しなかった方が徐々にそのリスクに近づいている可能性もあります。そのため、健康診断の結果を定期的に確認し、自身の健康状態の変化を意識的に把握することが重要です。
将来的に健康な生活を維持するためには、メタボリックシンドロームの予防が極めて重要です。バランスの良い食生活や適度な運動を取り入れることにより、病気の予防や進行を抑えることが可能になります。ただし、食事療法や運動に取り組もうとする場合、自身の体調や持病に応じて内容や負荷を調整することが必要です。具体的には、高血糖による糖尿病またはその予備軍、高血圧などの持病がある場合には、無理な食事制限や過度な運動がかえって身体に悪影響を及ぼすことがあります。そのため、食事や運動の内容を決定する際には、専門医や管理栄養士など専門家に相談し、自分に最も適した安全で効果的な方法を選ぶことが推奨されます。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは?
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは、運動器の障害や衰えが原因で、歩行や日常生活動作が困難となり、結果として要介護状態に至るリスクが高まることを示す状態です。このロコモティブシンドロームという概念は、日本整形外科学会が2007年に提唱し、予防や啓発を目的とした活動が積極的に行われています。ここで言う運動器とは、主に骨、筋肉、関節、靭帯、腱など、身体を動かすための組織や器官全般を指します。
運動器に問題を引き起こす主な要因としては、骨粗鬆症、筋力の低下、関節の柔軟性の喪失などが挙げられます。これらが進行すると姿勢が悪化し、身体の動きに支障をきたし、移動機能が徐々に低下していきます。特に、下肢の筋力の衰えは深刻で、日常生活動作(ADL)の大部分が下肢の筋力に依存しているため、その衰えは要介護状態へつながりやすいとされています。現在の自分の身体状態を把握することは重要であり、日本整形外科学会では簡便に評価できる「ロコモチェック」を提唱しています。
このロコモチェックには7つの項目があり、
⒈「片足で靴下が履けない」
⒉「家の中でつまずいたり滑ったりする」
⒊「階段を上がるのに手すりが必要である」
⒋「掃除機をかける、布団を上げ下ろしするなど家のやや重い仕事が困難である」
⒌「2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である」
⒍「15分程度続けて歩けない」
⒎「横断歩道を青信号で渡りきれない」
といった日常動作に関連する項目が設けられています。これらは骨、筋肉、関節などが衰えている兆候であり、いずれか1つでも当てはまる場合にはロコモティブシンドロームの可能性があると考えられます。
現代ではネットスーパーや宅配サービスが普及し、重たい荷物を運ぶ機会が減少していますが、これがかえって筋力の衰えを招いている可能性も指摘されています。日常生活で自然に行っていた動作を行わなくなると、筋力や運動器の機能は思いのほか急速に衰えてしまいます。ただし、無理に負荷をかけ過ぎると運動器の障害を助長する恐れもあり、自身の身体状況や体調をよく把握し、安全かつ適切な範囲内で日常的な活動や運動を継続していくことが重要です。
サルコペニアとは?加齢に伴う筋肉量減少とその健康リスク
加齢に伴って生じる筋肉量の減少や筋力の低下、それに関連する健康リスクは現代において深刻な課題の一つです。この筋肉の衰えは「サルコペニア」と呼ばれ、特にロコモティブシンドロームの一因としても注目されています。サルコペニアは単なる老化現象にとどまらず、移動能力や日常生活動作に直接的な影響を及ぼすため、健康寿命の延伸を考える上で無視できない問題です。
筋肉量の減少や筋力の低下は一般的に50代以降に顕著になると言われていますが、実際には20代後半からすでに筋肉量は徐々に減少し始めており、特に運動習慣が乏しくデスクワーク中心の生活を送っている人では、若年層であってもサルコペニアの兆候が現れることがあります。人が移動する際に最も重要な役割を果たすのは下肢の筋肉であり、その衰えが進行すると、歩行や階段昇降といった基本的な動作が困難になります。また、下肢に限らず全身の筋肉が活動を支えているため、身体全体の筋肉量の低下が生活の質に影響を及ぼします。
年齢に関係なく筋肉量は増やすことが可能であるという研究結果もありますが、若い頃と同じように筋肉を大きく太く発達させることは難しいとされています。その理由の一つは、高齢になると関節や心肺機能への負担が大きくなり、無理な負荷をかける運動を行うことができなくなるからです。また、筋肉を作るために必要な細胞の一種であるサテライト細胞の数や活性が加齢とともに減少することも影響しています。サテライト細胞は筋繊維の修復や新たな筋繊維の生成を担っていますが、その機能が弱まることで、筋肉の再生能力自体が衰えていくのです。
さらに近年では、サルコペニアと肥満が合併した「サルコペニア肥満」という状態が問題視されています。これは、筋肉量の減少によって基礎代謝が低下し、身体活動も少なくなることでエネルギー消費が減り、その結果として脂肪が過剰に蓄積されていくという悪循環の中で起こります。筋肉量が減少し、脂肪量が増加することで、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクもさらに高まり、結果的にメタボリックシンドロームとロコモティブシンドロームの両方を併発してしまう可能性があるのです。
また、「筋肉が脂肪に変わった」といった表現を耳にすることがありますが、これは正確には誤解です。筋肉と脂肪はまったく異なる組織であり、直接的に変換されることはありません。実際には、筋肉が減少したことでエネルギー消費が低下し、余分なエネルギーが脂肪として蓄積されたという状態が正しい理解です。つまり、体重が以前とあまり変わっていなくても、身体を構成する成分、すなわち筋肉量、体脂肪量、体脂肪率といった内部のバランスが大きく変化している可能性があるのです。
そのため、自分の体型が若い頃とあまり変わっていないと感じていても、安心することなく、体組成のチェックを行い、筋肉量や体脂肪量の変化に注意を払うことが大切です。定期的な健康診断に加え、筋力トレーニングや有酸素運動を日常生活の中に取り入れ、適切な食事管理を行うことで、サルコペニアおよびサルコペニア肥満の予防・改善につなげることができるのです。

まとめ
メタボリックシンドローム、ロコモティブシンドローム、サルコペニアは、いずれも私たちの将来の健康に深く関わる重要な問題です。
これらを放置すれば、日常生活の自由が制限され、重大な病気を招くリスクも高まります。
しかし、継続的な運動習慣と適切な食事管理を通じて、予防や改善は十分に可能です。
見た目だけではなく、「内面の健康」を意識し、自分自身の身体の変化に早めに気づくことが、健康寿命を延ばす第一歩となります。
今日からでもできる小さな取り組みを積み重ね、いつまでも元気で動ける身体づくりをしていきましょう。
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