寝ることで脂肪が減る⁉睡眠とホルモンの関係性

私たちが毎日を健康的に、そして快適に過ごすためには、良質な睡眠をとることが非常に重要です。
睡眠は単に身体を休めるためだけではなく、私たちの身体を調整する様々なホルモンが適切に機能するために欠かせない時間でもあります。
ホルモンは私たちの心身の健康状態に深く関わっています。
この記事ではそんな睡眠とホルモンの関係性について詳しく解説していきます。
是非最後までご覧ください。

ホルモンの役割と睡眠との関連
ホルモンとは、身体の機能を調節するために欠かすことができない物質であり、脳下垂体、甲状腺、膵臓、副腎といったさまざまな内分泌器官から分泌されます。これらの器官で作られたホルモンは血流に乗って全身に送り届けられ、各組織や細胞に作用します。ホルモンが適切な機能を果たすためには、分泌される量だけでなく、いつ分泌されるかというタイミングや規則的なリズムが非常に重要です。これらの分泌パターンは、私たちの睡眠や活動リズムと深く関連しています。
睡眠は単なる休息の時間ではなく、ホルモン分泌を適切に調整する重要な生理現象です。成長ホルモンは主に睡眠中、とりわけ深いノンレム睡眠時に多く分泌されます。この成長ホルモンは筋肉や骨の成長、細胞の修復や再生、免疫機能の維持など、私たちが健康に生きていくために重要な役割を果たしています。また、睡眠の質が良好であれば、体脂肪の分解を促し、新陳代謝を正常に保つ助けにもなります。
さらに、睡眠に関連する重要なホルモンとしてメラトニンが知られています。メラトニンは睡眠を促す働きがあり、夜間の暗い環境下で分泌が増加し、朝の明るさとともに分泌が抑制されます。体内時計と密接に連携しており、この体内時計の働きが乱れるとメラトニン分泌のリズムも崩れ、結果として不眠や睡眠の質の低下、さらには疲労感や集中力の低下、抑うつ気分の原因となることがあります。
ホルモンの語源はギリシャ語の「呼び覚ます」を意味する言葉から由来し、その言葉通りホルモンは身体のさまざまな機能を活性化させ、調整する役割を担っています。医療分野では、ホルモンに関係する病気を扱うのが内分泌科という診療科です。「内分泌」というのはホルモンのように体内で分泌され、血液を通じて他の細胞や組織に働きかける仕組みを指します。それに対して「外分泌」は、唾液や涙など体外に放出される物質の分泌を指しています。
人体は常に細菌やウイルス、さらにはストレスや気温の変化など、さまざまな外的な環境の変動にさらされていますが、ホルモンはこうした変化やストレスを感知し、各細胞や臓器にその情報を伝えることで、体内のバランスや機能を安定させる役割を果たしています。これは生体防御の一環であり、いわゆる「ホメオスタシス(恒常性)」を維持するために欠かすことのできない仕組みです。
ホメオスタシスとは、私たちの体温、血圧、血糖値といった身体の内部環境を一定の範囲内に保つための生理的な調整機能を指します。このホメオスタシスが正常に機能するためには、各種ホルモンが適切なタイミングで必要な量だけ分泌されることが極めて重要です。ホルモンの量が多すぎたり、少なすぎたりすると、身体にさまざまな不調や病気が現れたり、日常的なパフォーマンスの低下を引き起こす可能性があります。
現在、人間の身体には100種類以上のホルモンが確認されているとされ、それぞれが独自の分泌リズムを持っています。
このように、睡眠は私たちの身体の機能を維持し、ホルモンのバランスを整える上で非常に重要な役割を果たしています。質の高い睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを守ることが、心身の健康を維持するためには欠かせないのです。
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子どもにも大人にも重要な役割を持つ成長ホルモン
成長ホルモンはその名の通り、子どもが生まれてから思春期にかけて身体が大きく成長するために非常に重要な役割を担っているホルモンです。しかし、成長期が過ぎ、成人してからもこのホルモンは身体の健康を維持するために引き続き重要な役割を果たしています。
成長期を過ぎて身体の発達が一段落した後も、成長ホルモンは身体の新陳代謝を活性化する重要な働きを持っています。具体的には、骨密度を維持・向上させる骨代謝の促進、筋肉組織の修復・再生、皮膚細胞のターンオーバーの促進や美肌効果、脂肪を分解して体脂肪を減少させる効果などがあります。これらは大人になってからも若々しさや活力を保つために欠かせないものです。
成長ホルモンの分泌は特に睡眠と密接な関係があり、睡眠前半に現れるノンレム睡眠の最も深い段階でピークを迎えます。このため、一般的に22時から翌2時ごろが「睡眠のゴールデンタイム」として知られていますが、これはこの時間帯に睡眠が最も深くなりやすく、成長ホルモンが効果的に分泌されるからです。
成長ホルモンの分泌は脳の視床下部が分泌する「成長ホルモン分泌ホルモン(GHRH)」によって刺激されます。GHRHは脳下垂体に働きかけ、そこから成長ホルモンの分泌を促します。また、逆に成長ホルモンの過剰分泌を抑える「成長ホルモン抑制ホルモン(ソマトスタチン)」も存在し、この二つのホルモンがバランスを取りながら、分泌の量とタイミングを調整しています。
さらに、脳からの刺激だけではなく、胃から分泌されるグレリンというホルモンも成長ホルモンの分泌を促進することが分かっています。グレリンは空腹時に増加し、食欲を刺激するホルモンですが、同時に成長ホルモンの分泌も促進するという多面的な役割を持っています。
研究によって成長ホルモンの分泌パターンを測定したところ、眠りに入った直後に成長ホルモンの分泌が急激に増加することが明らかになっています。しかし、興味深いことに成長ホルモンの分泌には男女差が存在します。男性の場合、睡眠開始後すぐにピークが訪れますが、女性では夜間のピークだけでなく、日中にも複数回に分けて分泌量が増加するタイミングがあります。
また、よく誤解されがちですが、必ずしも就寝時間の早い遅いが成長ホルモンの分泌量に影響するわけではありません。実際には、睡眠を開始してから成長ホルモンが分泌されるというプロセスが重要であり、入眠時間が遅くなってもその分泌のピークは後ろにずれるだけで、トータルの分泌量に大きな影響はないとされています。ただし、深いノンレム睡眠が質の良いものであればあるほど、成長ホルモンの効果的な分泌が促されることは間違いありません。
しかし、24時間の総分泌量は比較的一定ですが、身体の成長や修復においては夜間の睡眠時に成長ホルモンが効率的に作用します。これは夜間のほうが成長ホルモン分泌ホルモンの活動が活発になるためで、昼間は胃から分泌されるグレリンが分泌を促進する主な要因となっています。
「寝る子は育つ」という昔からの言葉がありますが、ホルモン分泌の観点から見ると「夜、しっかり寝る子ほど育つ」という言い方がより正確でしょう。
大人においても、睡眠不足や睡眠の質の低下は肌荒れ、疲労感、筋肉の回復の遅れなどにつながります。これは主に成長ホルモンの分泌不足やリズムの乱れが関連しています。十分な睡眠をとることは、年齢を問わず、身体の健康を維持し活力ある毎日を送るために極めて重要なのです。
ストレスホルモン「コルチゾール」
ストレスホルモンとして知られる「コルチゾール」は、私たちの身体がストレスに対処する際に非常に重要な役割を担っています。副腎という腎臓の上に位置する小さな器官の表面にある副腎皮質から分泌されるホルモンであり、ストレスを受けた際にその分泌量が増加するため、俗に「ストレスホルモン」と呼ばれています。
コルチゾールは、主に筋肉組織においてタンパク質の分解を促進し、そこから生じたアミノ酸を血中に放出させる働きを持っています。また、脂肪組織に対しては、中性脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する作用があります。これらの分解産物は肝臓に運ばれ、糖新生というプロセスを通じてグルコース(血糖)を生成するために利用されます。その結果、血糖値が上昇し、身体が緊急時に必要なエネルギーを素早く得られるようになります。
また、コルチゾールは炎症反応を抑制する効果があり、痛みや腫れ、発熱といった炎症症状を軽減します。さらに免疫系の過剰な反応を抑える免疫抑制作用、細胞増殖を抑える細胞抑制作用もあります。これらの特性を活かし、コルチゾールを基にしたステロイド薬は、さまざまな疾患やアレルギー症状の治療に用いられています。
睡眠との関係においては、コルチゾールは起床時、特に睡眠から目覚めるタイミングにおいて分泌量がピークに達します。健康な人の場合、分泌量は早朝に高くなり、その後時間とともに徐々に減少していきます。夜間、睡眠に入った後もコルチゾールの分泌は次第に低下し、深夜に最も少なくなることが知られています。
しかし、睡眠不足や睡眠の質の低下など、体内時計のリズムが乱れる要因が存在すると、副腎への刺激が弱まり、コルチゾールの分泌パターンに乱れが生じます。具体的には、本来ピークを迎えるはずの早朝の分泌量が減少し、目覚めが悪くなったり、午前中の調子が上がらなくなったりする原因となります。逆に、通常なら夕方から夜にかけて低下するはずのコルチゾール濃度が、睡眠不足やストレスの影響で再び高まることがあります。このような異常な分泌パターンが続くと、身体は常にストレス状態に置かれ、心身に大きな負担がかかります。
長期にわたりコルチゾールが過剰に分泌されると、身体に様々な深刻な問題が生じます。例えば、動脈硬化の進行、骨密度の低下による骨粗しょう症の悪化、免疫機能の低下による感染症リスクの増加、さらには脳内の記憶を司る海馬という領域の神経細胞がダメージを受け、記憶力や認知機能の低下にも繋がります。
また、コルチゾールは筋肉や脂肪を分解する働きを持つため、長期間のストレスにさらされると体重が減少し、筋肉が痩せ衰える原因にもなります。これは「ストレスで痩せる」という現象の一つの説明にもなっています。
こうしたコルチゾールの影響から、適度な分泌は身体にとって重要であり必要なものですが、過剰分泌が慢性化すると健康に対して有害であることが明らかです。そのため、規則正しい生活や十分な睡眠、ストレスを軽減する工夫を取り入れることで、コルチゾールの分泌を正常な範囲に保つことが重要です。
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睡眠中のインスリン分泌と血糖値
インスリンは膵臓から分泌される重要なホルモンであり、私たちが食事によって摂取した糖分(特にグルコース、ブドウ糖)を血液中から各細胞へ取り込ませるために必要不可欠な役割を果たしています。インスリンは特に食後、血液中のグルコース濃度が高まるときに活発に分泌され、その結果、血糖値を一定の範囲内に保つという重要な働きを担っています。
しかし、何らかの原因で膵臓からのインスリン分泌が低下したり、インスリンの効き目が弱まったりすると、血液中の糖分が細胞に十分に取り込まれなくなります。その結果、糖分が血液中に多量に残ったままとなり、高血糖という状態を引き起こします。この状態が持続すると糖尿病などの慢性疾患につながる可能性があります。
食事後に血糖値が上昇するのはよく知られていますが、睡眠中にはどのように血糖値が変化しているのでしょうか。人間は睡眠中の6~9時間にわたって何も食べることができませんが、通常、健康な人であればこのような絶食状態においても低血糖を起こすことなく安全に過ごすことができます。これは睡眠中の血糖値が日中に比べて20%~30%ほど高く維持されることによるものです。
一方、眠らずに横になって絶食を続けた場合には、時間とともに血糖値は徐々に低下してしまいます。このことからも、睡眠そのものが血糖値を安定させる特別なメカニズムに深く関わっていることが推測できます。
睡眠中に血糖値が上昇する一つの理由として、血液中のグルコースが消費されにくくなることが挙げられます。睡眠中は身体活動が最小限に抑えられるため、グルコースの消費量が日中よりも大きく低下します。さらにインスリンの分泌パターンも影響しています。睡眠時においてはインスリン分泌量が日中に比べて低下する傾向にあり、血糖値を下げる作用が弱まってしまうため、結果として血糖値が高めに保たれやすくなるのです。
さらに、脳も睡眠中の血糖値調整に重要な役割を果たしています。脳は普段から身体の中で最も多くのグルコースを消費する器官ですが、深いノンレム睡眠時には脳活動が大幅に低下するため、脳によるグルコース消費量も減少します。そのため、余ったグルコースが血液中に残り、血糖値が自然に上昇するのです。
一見すると、睡眠中に血糖値が高まることは身体に悪い影響を及ぼすように思われるかもしれません。しかし、実際にはこの現象はエネルギー供給や代謝機能の維持にとって非常に重要です。夜間に血糖値が適切に維持されることで、身体が絶食状態でも正常に機能できるようになっています。

まとめ
睡眠とホルモンの分泌は相互に深く関係しており、質の高い睡眠はホルモン分泌の正常なリズムを保ち、心身の健康を維持するために極めて重要な役割を果たしています。
成長ホルモン、コルチゾール、インスリンなど、それぞれが睡眠中に特有のパターンで分泌され、私たちの健康に直接的な影響を及ぼしています。
適切な睡眠習慣を身につけることが、健康な生活を送る上で欠かせない要素となるでしょう。
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