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疲れていない“つもり”が一番危ない。隠れ疲労と回復のヒント

忙しい仕事、終わりの見えない家事、ストレスの多い人間関係、現代社会を生きる日本人の多くが、慢性的な疲労を抱えています。

しかし、「疲れているのに休めない」「休んでも疲れが取れない」と感じる人も少なくありません。

その背景には、単なる筋肉疲労だけではなく、脳や神経、自律神経の乱れ、そして“隠れ疲労”といった複雑な要因が潜んでいます。

この記事では、最新の研究やデータをもとに、日本人の疲労の実態やそのメカニズム、そして正しい疲労回復の方法について詳しく解説していきます。

是非最後までご覧ください。

日本人の疲労状況

疲労回復の方法にはさまざまなアプローチがあります。ストレッチや軽い運動を行うことで筋肉の緊張を和らげ血流を促進することは、代表的な方法の一つです。しかし、身体的なケアだけでなく、栄養価の高い食事をとること、十分な質の高い睡眠をとることなども重要です。バランスの良い食事に含まれるビタミン、ミネラル、タンパク質は疲労回復を促し、睡眠は身体と脳の修復・回復に大きな役割を果たします。

ところで、現代において人々は実際にどれほど疲労を感じているのでしょうか? 疲労の実態について調査されたデータを見てみましょう。

一般社団法人日本リカバリー協会は、一般社団法人日本疲労学会および株式会社ベネクスと共同で、2017年から全国約14万人を対象に、インターネットを利用して健康及び生活状況を把握する大規模調査「ココロの体力測定」を実施しています。この調査では対象者を「元気な人」、「疲れている人(低頻度)」、「疲れている人(高頻度)」の三つのカテゴリーに分類し、「日本人の疲労状況」として分析しています。

その調査結果を詳しく見ると、2017年の時点では「元気な人」が24.2%存在していました。しかし、新型コロナウイルス感染症が流行する前の2019年には23.2%にわずかながら減少し、2023年にはさらに18.2%にまで低下しています。反対に、疲労を感じている人々は増加傾向にあり、「疲れている人(低強度)」、「疲れている人(高強度)」ともにその割合は年々上昇しています。このことから、日本社会では多くの人々が日常的に疲労を感じており、「疲労大国」と称されることにも納得できます。

また、文部科学省が行った過去の調査においても、多くの人が常に何らかの疲労を抱えて生活していることが報告されています。現代人の生活は、仕事、学業、家庭生活、人間関係などさまざまなストレス要因にさらされており、その結果として慢性的な疲労が生じやすくなっています。

乳酸は疲労物質ではなくエネルギー源の1つ

疲労物質=乳酸という考え方は1929年の研究報告に由来すると言われています。当時、激しい運動を行った後の筋肉組織内で乳酸の量が著しく上昇したことが観察され、この結果を根拠に、乳酸が疲労を引き起こす原因であると広く考えられるようになりました。

乳酸が生成されるメカニズムは、人間のエネルギー生産システムと密接に関係しています。人間の身体は、呼吸によって取り込んだ酸素を使って、摂取した栄養素をエネルギーへと変換し、そのエネルギーを利用して筋肉を動かしています。しかし、運動の強度が高まると、身体が必要とする酸素量が供給される酸素量を超え、酸素不足の状態になります。この状態がいわゆる無酸素運動状態であり、身体は酸素を使わずにエネルギーを迅速に生産しなければなりません。

この際にエネルギーとして使われるのが、筋肉や肝臓に貯蔵されている糖であるグリコーゲンです。グリコーゲンは酸素を使わずに速やかにエネルギーへと変換されますが、このプロセスで副産物として乳酸が生成されます。この乳酸は運動中に筋肉内や血液中に蓄積されることから、長い間、疲労の原因物質であると考えられてきました。

しかし近年の研究により、この考え方に大きな誤解があったことが明らかになってきました。運動後に疲労感が最も強くなる時点で乳酸の濃度を測定すると、実はその時点ではすでに乳酸量は運動前の水準にまで戻っていることが判明しました。さらに、運動中や運動後の乳酸濃度と運動能力やパフォーマンスとの間には直接的な相関がないということも明らかになりました。

では、運動後に体内で生成された乳酸はどのように処理されているのでしょうか。その答えは、酸素を利用した酸化系エネルギー産生システムにあります。このシステムは、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動で主に使われるもので、ミトコンドリアという細胞内の小器官が中心的な役割を担っています。ミトコンドリアは筋肉内に残った乳酸を取り込み、それを再利用して新たなエネルギー源として活用する能力を持っています。つまり乳酸は身体にとって有害な物質ではなく、むしろ運動時における重要なエネルギー源であることがわかってきました。

なぜ乳酸は長年、疲労物質と誤解されていたのでしょうか。それは、過去の多くの研究において運動後の乳酸の蓄積を測定した際、乳酸が完全に酸化されエネルギーとして利用される前に運動が終了していたため、血中や筋肉内に残存していた乳酸を見て、それを疲労原因と早計に判断してしまったからだと考えられています。

乳酸が疲労物質ではないことを証明する興味深い研究もあります。乳酸を含んだ点滴を行いながら被験者に運動を行わせるという実験をしたところ、乳酸を注入した状態のほうが、点滴を行わなかった場合と比較してより長時間運動を継続することが可能だったという結果が得られました。もし乳酸が真の疲労物質であるならば、乳酸を追加した状態での運動はかえって運動能力を低下させるはずです。しかし、実験結果はその逆であったことからも、乳酸が疲労物質ではなく、むしろ運動を持続させる重要なエネルギー供給源であることが裏付けられています。

身体を傷つける活性酸素

疲労の原因の一つとして広く知られているのが「活性酸素」です。人間の身体は酸素を利用してエネルギーを生成する際に、副産物として活性酸素が生じます。この活性酸素は非常に反応性が高く、細胞内のさまざまな物質を酸化させて損傷を与える可能性があります。ただし通常の場合、細胞には抗酸化物質という防御機構が備わっており、活性酸素はこれらの抗酸化物質によって速やかに除去されます。したがって、日常的な活動範囲内であれば、活性酸素が問題になることはほとんどありません。

しかし、身体の活動量や負荷が著しく増加すると、それに伴って活性酸素の生成量も急激に増加します。このような状態になると、細胞の抗酸化物質だけでは処理が追いつかなくなり、活性酸素が細胞内に蓄積し始めます。活性酸素が過剰になると、細胞膜、DNA、タンパク質など重要な細胞構造を傷つけるため、細胞本来の機能が低下してしまいます。その結果として、身体のさまざまな器官や組織の機能が低下し、運動能力や日常のパフォーマンスが低下することになるのです。

特に過度な負荷は、激しい運動だけに限らず、精神的なストレス、長時間労働、睡眠不足などのオーバーワークも含まれます。運動による過負荷では筋肉や関節の細胞に影響が及び、痛みや炎症などの症状が現れることがあります。また、精神的なストレスの場合には、脳や神経細胞に活性酸素によるダメージが発生し、記憶力の低下や集中力の低下、精神的な疲労感などを引き起こします。

実際に疲労感を認識するのには、免疫細胞が深く関与しています。免疫細胞は本来、細菌やウイルスなどの異物と戦い、身体を守る働きをしていますが、活性酸素により損傷を受けた細胞を見つける役割も果たします。免疫細胞がダメージを受けた細胞を検知すると、脳に対して「細胞が疲労している」というシグナルとなる伝達物質を送ります。この信号を受け取った脳は、その細胞がこれ以上活動を続けないように「休息せよ」という指令を出します。この脳からの指令こそが、私たちが疲労感として感じるものなのです。

身体には疲労感に加えて、痛み、発熱といった反応があり、これらは健康を守るための重要なシグナルとして機能しています。これらの反応は「身体の三大アラーム」とも呼ばれています。特にだるさや頭がぼんやりするといった症状は疲労の初期症状であり、身体が休息を求めているということを明確に示しています。疲労感を無視せず、適切な休息、栄養補給、睡眠などの回復措置をとることが重要なのです。

疲労の種類

抹消性疲労

抹消性疲労とは、主に筋肉を中心とした身体的な疲労を指します。このタイプの疲労は、激しい運動や長時間の運動を行うことで生じるもので、筋肉内に蓄積されたエネルギー源が枯渇することが原因となります。例えば、マラソンのように長時間にわたって継続的に身体を動かし続ける運動では、筋肉のエネルギーが徐々に消耗され、筋肉が十分な力を発揮できなくなり、疲労感を覚えます。

さらに、部活動やスポーツ活動などでトレーニングや練習を継続的に行っている際に、身体が十分な回復を得られないまま運動を続けてしまうと、「オーバートレーニング」と呼ばれる状態に陥ることがあります。オーバートレーニングの状態になると、筋肉や神経系の回復が遅れ、運動中に集中力が欠けるようになり、身体の動きが鈍くなります。これは運動のパフォーマンス低下だけでなく、怪我のリスクも高めることになります。

オーバートレーニング状態になると、具体的には次のような兆候があらわれます。まず、通常よりも疲労感が強くなり、運動後の疲労回復に必要な時間が長くなります。さらに、運動後の心拍数や血圧が安静時の状態に戻るのが遅れることも特徴的です。これは自律神経のバランスが崩れ、身体の恒常性を維持する能力が低下しているためです。また、筋肉痛や関節痛などの身体的な不調を頻繁に感じたり、十分な睡眠をとっているにも関わらず、常に倦怠感を感じたりすることもあります。

こうした抹消性疲労を予防・改善するためには、適切な栄養補給や水分補給、運動後のクーリングダウンやストレッチ、そして十分な睡眠をとることが不可欠です。また、疲労が蓄積していると感じた場合には、一度運動強度を落としたり休息を十分にとったりすることが重要です。適切な休息や栄養補給により、筋肉のエネルギー源が回復し、再び十分なパフォーマンスを発揮できる状態に戻ることができます。自分自身の身体のサインに注意を払い、無理をせずに適切な管理を行うことが、長期的なパフォーマンス向上や怪我の防止につながります。

中枢性疲労

中枢性疲労とは、精神的疲労や脳の疲労とも言われ、脳や神経系統に由来する疲労を指します。この疲労は主に、緊張感や集中力が必要とされる環境での長時間の作業や、精神的なストレスが継続的にかかる状況で起こります。例えば、ミスが許されない精密作業、重要な会議、プレゼンテーションなど、精神的な負荷が高まる場面で特に顕著です。

こうした状況下では、脳の神経細胞が非常に活発に働きます。脳の活動が増すと酸素消費量が急激に増加し、それに伴い副産物として活性酸素が大量に発生します。本来ならば、脳内には活性酸素を中和・除去する抗酸化物質が存在していますが、過度な緊張状態や長期にわたるストレスにさらされ続けると抗酸化作用が追い付かなくなり、活性酸素が蓄積します。その結果、活性酸素が脳細胞にダメージを与え、脳細胞の機能低下を招きます。

適度な緊張感やストレスは脳を刺激し、注意力や集中力を高め、作業効率を向上させる場合があります。しかし、過度な緊張や持続的なストレスは脳への負担を過剰に増加させ、かえって作業効率や判断能力を著しく低下させることになります。そのため、自分自身の作業スタイルを見直し、環境を調整することによって、適度な緊張感やストレスレベルを維持することが重要です。定期的な休息やリフレッシュを意識的に取り入れることで、中枢性疲労を予防し、長期的なパフォーマンスを維持することができます。

中枢性疲労とは、身体的または精神的な自覚症状はあるものの、血液検査やエコー検査など一般的な医学的検査では異常が見られないことが多い状態です。こうした疲労の改善には、薬や医療行為による治療ではなく、セルフケアが特に重要になります。

疲れているのに眠れない

身体には「自律神経」と呼ばれる、生命活動を維持するために欠かせない重要な神経系が存在します。この自律神経は、私たちの意識とは無関係に、心臓の鼓動、呼吸、血圧、消化、体温調節、内臓の働きなど、あらゆる身体の器官を自動的にコントロールしてくれています。いわば、生命維持装置の司令塔のような存在であり、全身に命令を送る役割を担っています。そのため、体内でも特に疲れやすい器官の一つであるとも言えるのです。

自律神経は大きく分けて「交感神経」と「副交感神経」の二つの系統から構成され、それぞれが異なる役割を担いながら、絶妙なバランスを保つことで私たちの身体を正常に機能させています。交感神経は主に緊張状態、ストレス、運動、覚醒時など、身体を活動的にさせる場面で優位になります。一方で、副交感神経は休息、睡眠、リラックス状態の時に働き、身体を休め回復させる方向に導きます。

この交感神経と副交感神経は、一日の中でも常にスイッチのように切り替わっており、日中は交感神経が優位になって心身を活動的に保ち、夜間には副交感神経が優位になることで心身を鎮め、深い休息や睡眠へと導いてくれます。これが本来の自律神経のリズムです。

しかし、現代社会ではストレスが多く、夜遅くまで仕事をしたり、スマートフォンやパソコンなどの強い光に長時間さらされたりすることで、このスイッチの切り替えがうまくいかなくなることが少なくありません。特に夜間でも交感神経が過剰に働いた状態が続くと、身体は常に興奮状態になり、リラックスができず、疲れているにもかかわらず眠れない、という矛盾した状況に陥るのです。これは「自律神経の乱れ」と呼ばれ、現代人に多く見られる不調の一因です。

さらに、交感神経が優位な状態が長期間続くと、自律神経を統括する中枢、すなわち脳幹部の自律神経中枢そのものの細胞にも疲労が蓄積してしまいます。これは自律神経中枢に負担がかかりすぎることにより、神経細胞の機能が低下するためであり、その結果、自律神経の働き自体が鈍くなり、交感神経と副交感神経の切り替えがさらに困難になるという悪循環に陥ります。

自律神経が消耗し機能低下を起こすと、それに従って身体全体のさまざまな器官や臓器にも影響が波及します。たとえば、消化機能の低下、心拍の異常、体温調整の乱れ、倦怠感や集中力の欠如、さらには免疫力の低下など、さまざまな身体的不調があらわれてきます。これらの不調は一見バラバラに見えますが、根本には自律神経の乱れや疲労が関係しているケースが多くあります。

このように、自律神経のバランスを保つことは、心身の健康維持において非常に重要です。そのためには、日常生活の中でストレスを溜めすぎないように心がけ、夜はできるだけ強い光を避けてリラックスできる環境を整える、適度な運動を取り入れる、十分な睡眠を確保するなど、自律神経に優しいライフスタイルを実践することが必要です。自律神経が健やかに保たれていれば、身体は本来の機能を十分に発揮し、疲れにくく、回復力の高い状態を維持することができるのです。

「隠れ疲労」のメカニズム

単純な作業や退屈な会議に長時間参加することは、一見すると身体を動かしていないため疲れにくいように感じられますが、実際には多くの人が強い疲労感を覚えます。これは、精神的な刺激や達成感が少ないことによって脳が活性化しにくくなり、集中力を保つためにエネルギーを多く消耗してしまうためです。特に自分の意志でなく、受動的に行わなければならない作業や環境に置かれることは、心身に大きなストレスを与える要因となります。

一方で、自分の好きな趣味に没頭していたり、やりがいや達成感のある仕事に取り組んでいるときには、時間を忘れて集中でき、終わった後でもあまり疲れを感じないという経験がある人も多いのではないでしょうか。このような現象には、脳の前頭葉という部位が大きく関わっています。前頭葉は人間の思考、感情、意欲、判断、創造性などを司る重要な領域であり、私たちの「やる気」や「意志決定」に深く関与しています。

人間の脳は、やりがいや喜び、達成感といったポジティブな感情を伴う行動に対して、報酬系と呼ばれる神経回路が活性化されます。このとき脳内では、ドーパミンという神経伝達物質が分泌され、やる気を引き出したり、集中力を高めたりします。また、幸福感をもたらすβエンドルフィンなどのホルモンも分泌され、精神的に満たされた状態になります。これらの物質の働きにより、実際には身体に疲労が蓄積していても、それを感じにくくなるのです。

さらに、前頭葉は免疫細胞から送られてくる疲労のシグナル、すなわち「休んでほしい」という伝達物質をブロックするような働きも持ちます。本来であれば、免疫細胞が損傷した細胞を検知し、「疲れている」という情報を脳に送ることで、脳は休息を促す指令を出します。しかし、前頭葉が活性化していると、そのシグナルを遮断し、脳が「まだ動ける」「もっと頑張れる」と判断してしまうため、本来必要な休息が取れなくなるのです。この状態を「隠れ疲労」と呼びます。

こうした状態が長期間続くと、自分自身では疲れていないと思い込んでいても、実際には身体の中で疲労がどんどん蓄積されていき、やがて過労や慢性的な体調不良、最悪の場合は過労死につながる恐れもあります。特に「自分が頑張ることで物事がよくなる」「自分がやらなければ誰かが困る」といった使命感や責任感が強い人ほど、無理をしてしまいがちです。

また、「〇〇さんが頑張って働いてくれるおかげで職場が成り立っている」などといった誉め言葉や評価は、一見するとモチベーションを高めるように思われますが、裏を返せば労働を促すための心理的誘導として利用されている場合もあります。企業や組織が意図的に従業員のやる気を引き出す手段として、こうした言葉を利用しているケースも存在します。これは本人にとっては知らず知らずのうちに、自己犠牲を強いる環境に置かれていることを意味する場合もあるのです。

だからこそ、自分の疲労に対して正しく向き合い、それを素直に受け止めることが重要です。「頑張ること」や「やりがいを持つこと」は大切ですが、それと同じくらい「無理をしないこと」「自分を大切にすること」も必要です。心身の健康を維持するためには、適度な休息とバランスの取れた生活習慣を意識し、自分の心と身体の声に耳を傾ける習慣を持つことが求められます。

まとめ

「疲れたら休む」は、誰もが知っているはずの基本です。

しかし、現代の私たちは、目の前の仕事や、評価への欲求などから、その基本すら忘れがちです。

心や身体に蓄積された疲労は、やがて集中力や判断力の低下、体調不良、そして重大な病気の引き金にもなり得ます。

「疲れている」と感じたときこそ、自分の心と身体の声に耳を傾けるべきタイミングです。

質の高い睡眠、適度な運動、栄養バランスの取れた食事、そして何より“無理をしない勇気”を大切にしましょう。

TRANSCENDでは、一人ひとりの状況に合わせて適したメニューを組んでいます。

通う頻度についても月2回、月4回、月8回の3つのプランから選択できるので、お気軽にご相談ください。

豊橋市のパーソナルジム「TRANSCEND」