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音楽で変わるパフォーマンス!脳と身体を刺激するメカニズム

イヤホンから流れる音楽が心地よく身体を後押ししてくれることがあります。

リズミカルなビートに自然と足取りが軽くなり、時にはお気に入りのメロディが疲労感を忘れさせてくれるかもしれません。

このように音楽が私たちの心身にもたらす効果は、実は感覚的なものだけではありません。

この記事では、脳科学や運動心理学においても明確に認められた、音楽の驚くべき力について詳しく解説していきます。

是非最後までご覧ください。

自然と身体を動かす音楽の力

イヤホンを装着して走り出すとき、その耳には一体どんな音楽が流れているでしょうか。

聴いているものによって、「自然と元気が湧いてくる」「気分がすっきりと整う」「今日はこの曲の気分だ」と、そのときどきで気持ちのあり方にも違いが生まれるでしょう。音楽と運動との関係は、非常に個人的でありながらも、共通する効果がいくつも報告されています。

音楽を聴きながら運動を行うと、リズムに合わせて自然と身体が動いてしまう。この反応は、実は人間が本能的に持っている性質だと考えられています。驚くことに、生後わずか5か月の赤ちゃんでも、音楽を耳にするとリズムに合わせて身体を揺らしたり、手足を動かしたりする様子が観察されています。このように、音楽に対して身体が自発的に反応する性質は、生まれつき備わっているものだと言えるでしょう。

ただし、この反応はすべての生物に共通するものではありません。動物界でも、音楽やリズムに合わせて「踊る」ような動きを見せるのは、限られた種だけに見られる現象です。たとえば、インコなどの鳥類、アシカ、そしてチンパンジーなど、ごく一部の動物たちに限定されており、非常に興味深い研究対象となっています。

さらに、音楽が生き物に与える影響については、人間や動物だけにとどまりません。植物に音楽を聴かせることで成長を促すという「音響栽培」という手法も存在します。特定の音の周波数やリズムが、植物の細胞分裂を活性化させたり、成長ホルモンの分泌を促したりする可能性があると考えられており、農業分野でも注目されています。

このように、音楽がもたらす効果は、私たちが思っている以上に幅広い領域に及んでいるのです。今後、さらに音楽の力を活用した新たな健康法や育成技術などが発展していくことが期待されます。ランニング中のイヤホンの中で流れているその一曲が、実は心身にとって大きな意味を持っているかもしれません。

身体をコントロールするリズム能力

音楽を構成する要素として、一般的に「リズム」「メロディ」「ハーモニー」の3つが挙げられます。
このうち、人間が生まれたときから最も早く感じ取るとされるのがリズムです。

その原点は、私たちがまだ母親のお腹の中にいるときにまでさかのぼります。
胎児期、赤ちゃんは母親の心拍のリズムを耳にし、さらに身体を通して振動としても感じ取っています。
この心拍音は、生命のリズムともいえる存在であり、人間が最初に出会う「リズム体験」だと言われています。

生まれたばかりの赤ちゃんは、すでにこの心拍のリズムを記憶しており、成長するにつれて周囲のさまざまな刺激、たとえば、身体に伝わる振動、目から入る映像情報、そして歌や音楽などを通じて、より複雑で多様なリズムを理解し、身体で表現できるようになっていきます。この過程の中で、人は自然と「リズム感」を育んでいくのです。

人間には本来、外部から伝わるリズムやテンポに合わせて身体を動かす「同調」という性質があります。
たとえば、集団でのウォーキングやマラソン大会などでも、周囲のペースや音楽に無意識に歩調を合わせてしまうことがあります。
これは、リズムに合わせて身体を動かすという本能的な反応が働いているからです。

ウォーキングなど、比較的ゆったりとしたペースで行う運動であれば、早歩きに適した中程度のテンポの音楽が効果的だとされます。
一方、よりスピードを求めるランニングでは、テンポの速い音楽を聴きながら走ることで、自然と身体がその速さに合わせてリズムを刻み、結果的にペースアップを図ることができるでしょう。

このように、音楽のリズムやテンポと運動のスピードが調和することで、より効率的に身体を動かせるという効果が期待されます。
特に「今日はタイムを縮めたい」「自己ベストを更新したい」という意識を持ってランニングに取り組む場合には、自分が目指すペースに合ったテンポの音楽を選ぶことが、自然なペースメイクに役立つでしょう。

しかし一方で、すべてが理想通りに進むわけではありません。
たとえば、急な上り坂に差しかかったとき、または混雑して前が詰まってしまい思うようにスピードが出せないときなど、環境や状況によって運動のペースが落ちてしまうこともあります。
このとき、テンポの速い音楽を聴き続けていると、音楽のリズムと身体の動きとの間にズレが生じ、身体がうまく乗れなくなってしまうことがあります。
それにより、リズムを取り戻すために余分なエネルギーを消費してしまったり、無理にテンポを合わせようとして疲労感が増してしまったりすることがあり、かえってパフォーマンスを低下させる場合もあるのです。

このような現象を理解するためには、運動能力の一つである「コーディネーション能力(調整力)」に注目する必要があります。
コーディネーション能力とは、周囲の状況や外部からの情報を正確に認識し、それに応じた適切な動きを素早く行うための力です。
その中の一つに「リズム能力」があります。

リズム能力とは、耳や目などの感覚器官を通じて受け取った情報を、適切な動きへと変換し、リズムに合わせて身体をコントロールする力を指します。
この能力は、あらゆるスポーツの基礎に不可欠なものです。特に音楽の伴奏に合わせて行う競技、たとえば新体操、フィギュアスケート、シンクロナイズドスイミング(現在のアーティスティックスイミング)などでは、演技の完成度を大きく左右する重要な要素となります。

また、集団で動きを揃えるチームスポーツや、ダンスのようなパフォーマンスにもリズム能力は欠かせません。
個人競技であっても、リズム感が高い選手ほど動作のキレやスムーズさ、タイミングの良さが際立ち、競技力向上に繋がると言われています。

このように、リズムと人間の身体、そして運動との間には深い関係があり、音楽はその橋渡し役として大きな役割を果たしているのです。

ドーパミンがもたらす運動効果

ウォーキングやランニングのように一定のリズムを刻む運動だけでなく、筋力トレーニングのように激しい負荷を伴う運動においても、音楽は私たちの運動効果やパフォーマンス向上に大きな影響を与えることがわかっています。

たとえば、息が切れそうなほどきついトレーニングをしている最中に、ふと映画「ロッキー」のテーマ曲が流れてきたらどうでしょうか。
映画を観たことがある人であれば、ロッキーがトレーニングに励むあの名シーンが頭に浮かび、自然と「もうひと踏ん張りしよう」という前向きな気持ちになるかもしれません。

もちろん、どの音楽が力を与えてくれるかは個人の好みや、映画や楽曲に対する思い入れにもよります。
しかし「ロッキー」のテーマ曲でなくても、自分が大好きなアーティストの曲、自分にとって特別な意味を持つ曲が流れてきたときには、疲労感が一時的にやわらぎ、もう少し頑張ってみようという意欲が自然と湧いてくることは多いでしょう。

このような現象は、単なる気分の問題ではありません。
実際、好きな音楽を聴いて「気分がよくなる」という反応は、脳内で科学的に説明できる変化によるものです。
その中心となっているのが、「ドーパミン」と呼ばれる脳内物質です。

ドーパミンは脳の神経伝達物質の一つで、主に「やる気」や「快感」「達成感」といった感情に関わっています。
ときに「快楽物質」や「脳内麻薬」とも呼ばれることがあり、これが分泌されると、人間は自然とポジティブな気持ちになり、行動意欲が高まります。

好きな音楽を聴くとドーパミンが分泌され、それが「気分がよい」「楽しい」「もっと続けたい」という感覚に結びつきます。
運動中にこの快感を得ることは、脳にとっては「報酬」として認識されます。
そして、脳の報酬系・快楽系の神経回路が活性化することによって、通常なら「きつい」「つらい」と感じるはずの運動も、よりポジティブな気持ちで取り組むことができるようになるのです。

つまり、好きな音楽をうまく取り入れることで、運動そのものに対するモチベーションが高まり、パフォーマンス向上につながることが科学的にも裏付けられているのです。

さらに、運動中の音楽活用法として、「ある曲が流れたらもうすぐ終了」という合図にする方法も効果的です。
たとえば、トレーニングのラスト5分だけ特別に元気が出る曲を流すと決めておけば、「この曲が始まったから、あと少しだけ頑張ろう」という明確な目標が生まれます。
また、追い込みたいラストスパートにあらかじめアップテンポな曲をセットしておくことで、自然と心拍数や運動強度を高め、質の高いトレーニングを最後までやりきる助けにもなります。

音楽の力を上手に活用することは、単なる「楽しくなる」ためだけでなく、脳科学的にも、運動心理学的にも、非常に理にかなった方法なのです。

音楽は脳にも刺激を与える

人間は音楽を聴くと、たとえ実際に身体を動かしていなくても、脳の運動を司る領域が活性化することがわかっています。特に、リズムを感じ取ったときには、運動に関連する脳の領域が自然と活動を始めるのです。ある興味深い研究では、被験者にリズムの整った音楽と、リズムのないランダムな音の音楽をそれぞれ聴いてもらい、そのときの脳活動を比較調査しました。

その結果、リズムのある音楽を聴いているときには、脳の運動制御に深く関わる「運動前野背側部」、「補足運動野」、そして「前補足運動野」と呼ばれる領域の活動が著しく強くなることが明らかになりました。これらの脳領域は、本来は身体を実際に動かす指令を出す働きを持っている場所であり、リズムを聴くだけでこれらが活性化することから、人間の脳は音楽のリズムに非常に敏感であることがわかります。

この現象は、人が自然にリズムに合わせて身体を動かしたくなってしまう理由にもつながっています。リズムにより脳内の運動領域の興奮性が高まることで、身体を動かすために必要な刺激の閾値が下がり、通常よりも少ないエネルギーで運動が引き起こされやすくなると考えられています。つまり、リズムを感じるだけで、無意識のうちに身体が動き出す準備が整ってしまうのです。

このような音楽と運動の関係は、スポーツやリハビリテーションの分野でも積極的に活用されています。たとえば、ある研究では、400メートル走を行う被験者に対して、走るテンポに合ったリズムの音楽を聴かせたグループと、音楽なしで走ったグループを比較しました。その結果、リズムに合った音楽を聴きながら走ったグループの方が、明らかにタイムが良かったという結果が得られました。このことから、音楽のリズムが身体の動きに自然なリズム感を与え、パフォーマンスの向上に寄与することが示唆されています。

また、高齢者の運動においても、音楽は非常に有効であるとされています。音楽に合わせて運動を行うことで、単なる運動よりも楽しく、継続しやすいという心理的効果があるだけでなく、脳への刺激が増すことによって認知機能の低下を防ぎ、脳の老化を抑制する効果が期待されています。特に、リズムに合わせた動きは、脳の前頭葉や運動野など広範囲な領域を活性化させ、記憶力や注意力などの向上にもつながると考えられています。

さらに、脳卒中後のリハビリテーションや、パーキンソン病患者の運動療法においても、音楽は重要な役割を果たしています。たとえば、パーキンソン病患者は運動開始のきっかけがつかみにくく、歩行障害を抱えることが多いですが、一定のリズム音(メトロノーム音や音楽)に合わせることで歩行がスムーズになったり、動き出しの困難が緩和されたりすることが報告されています。音楽によるリズム刺激が、運動のタイミングやスピードの制御を助けると考えられているのです。

音楽がもたらすリラックス効果と身体的柔軟性の向上

ストレッチは身体の柔軟性を高めるために効果的ですが、心身が緊張した状態では筋肉を十分に伸ばすことが難しくなります。身体が固まってしまう原因として、筋肉や結合組織自体の硬さに加えて、精神的な緊張や無意識に入る余分な力など心理的要素も挙げられます。ストレッチの効果を最大限に引き出すためには、いかにして心身のリラックス状態を作り出し、余分な緊張を取り除くかが重要となります。

この課題を解決するために有効なのが、音楽を利用したリラクゼーションです。人間が深くリラックスしているときの脳波として知られるのがα波であり、心地よい音楽を聴くことでα波が優位になることが知られています。実際に、この音楽とリラックス、柔軟性の関係を明らかにするため、運動疾患のない男女を対象としたある興味深い研究が行われました。

この研究では、被験者たちに脚の筋力トレーニングを行わせた後、太ももの裏側にある筋肉(ハムストリングス)のストレッチを行いました。その際、音楽を聴くのみの場合、音楽なしでストレッチを行う場合、音楽を聴きながらストレッチを行う場合という3つの条件下で、それぞれ筋肉の柔軟性(可動域)を比較しました。その結果、音楽を聴きながらストレッチをしたグループの柔軟性が最も向上し、音楽によるリラックス効果が筋肉の伸展性を高めることが示されました。

この効果のメカニズムとしては、緊張状態を引き起こす交感神経の活動が音楽により抑制され、副交感神経が活発化することでα波が優位になり、筋肉がリラックスして伸びやすくなると考えられています。もちろん、個々の音楽に対する好みや運動経験の有無などによっても効果に差が出ることはありますが、全般的に音楽を用いたリラックスがストレッチ効果を高める有効な方法であることは明確です。

音楽が促す思考の柔軟性と創造力の向上

音楽の効用は身体的な柔軟性だけでなく、思考や創造性といった認知的な面にも影響を及ぼします。アメリカの科学誌に掲載された研究によると、前向きで気持ちが高まるような音楽を聴くことで、他の種類の音楽を聴いた場合よりも創造力が向上することが報告されています。

この研究では、肯定的で幸福感をもたらす高揚感のある音楽、高揚感のない落ち着いた音楽、悲しみや否定的な感情を引き起こす音楽、高揚感と同時に否定的な不安感を伴う音楽という4種類の音楽をそれぞれ参加者に聴かせました。その後、創造的なアイディアを多方面に広げる能力(拡散的思考)と、一つの問題に対して最適な解決策を見つけ出す能力(収束的思考)を測定するテストを行いました。

結果として、幸福感や高揚感を伴う音楽を聴いた参加者は、拡散的思考テストで高得点を記録しました。一方で、その他の音楽を聴いた参加者にはこのような傾向は見られませんでした。このことから、研究チームは肯定的で幸福感を高める音楽が、思考の柔軟性や創造性を向上させる可能性が高いと結論付けています。

音楽が脳内の感情や認知に働きかけ、精神的リラクゼーションを促すことで、身体的・精神的な柔軟性を高めることは、スポーツやリハビリテーションだけでなく、教育や職場など様々なシーンで積極的に活用できる重要なポイントとなるでしょう。

まとめ

音楽は、私たちが身体を動かすための力を引き出し、精神的なリラックスや創造性をも促進する、多面的な効果を持っています。

スポーツやトレーニングはもちろん、日常生活や仕事の場面でも、音楽をうまく取り入れることで、新たな可能性や効率性が生まれることでしょう。

次にイヤホンをするとき、その一曲があなたの心や身体、そして日々の暮らしにどのようなプラスの影響を与えるのか、楽しみながら体感してみてください。

TRANSCENDでは、一人ひとりの状況に合わせて適したメニューを組んでいます。

通う頻度についても月2回、月4回、月8回の3つのプランから選択できるので、お気軽にご相談ください。

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